シャチ購入についての公開質問
名古屋港管理組合が、太地町立くじらの博物館で飼育されている雌シャチ「ナミ」を購入する計画を公表して以来、多くの反対意見が提出されたにもかかわらず購入が決定され、今般、シャチが移送された事は誠に遺憾です。
名古屋港水族館では、雌シャチ「クー」を約5年間飼育しましたが、今回購入した「ナミ」は推定年齢が27才で、「クー」の死亡時の推定年齢16才よりも11才上回っています。単純に考えれば、いつ何があっても不思議ではありません。さらに、これまで「ナミ」が飼育されてきたのはコンクリートの水槽ではなく、自然の海に近い環境であり、劇的な環境の変化に適応できるかどうか懸念されるところです。
今回のシャチ購入の目的は、繁殖研究の継続にあるようですが、繁殖計画について疑問があり質問をいたします。この質問は、マスコミ各社、Web媒体などで公開をいたしますので、ご承知置き下さい。
ご多忙とは存じますが、下記設問につき、7月16日(金)までに、書面にて回答くださいますようにお願いいたします。
記
(1)繁殖相手(精子)の入手について
繁殖研究のために「クー」を飼育していた5年間に、繁殖相手(精子)の入手はありませんでした。今回、あらたにシャチを購入して繁殖研究を行うにあたり、繁殖相手(精子)の入手はどのように計画されていますか?
(2)血統管理について
動物園や水族館で繁殖させる場合、血統管理は重要な事項であると認識しています。「ナミ」で繁殖研究を行うにあたり、血統管理についてどのようにお考えですか?
(3)人工繁殖について
「クー」飼育時には、人工繁殖についても研究の対象とされていたと認識しています。しかしながら、名古屋港水族館で繁殖したベルーガ、現在妊娠中のバンドウイルカについては自然交配による繁殖です。シャチでしか人工繁殖を研究できないとは考えられません。なぜ、これまでシャチ以外の鯨類で人工繁殖の研究を進めていないのでしょうか?
(4)これまでの繁殖研究について
「クー」は1997年に、研究目的で野生から捕獲された5頭の内の1頭でした。約10年で5頭すべてが死亡しました。繁殖研究とは、個体を増やす研究であると認識していますが、5頭が死亡するまでに1頭も繁殖できていません。また、この間に実施された研究成果は、誰もがいつでも知り得る、共有できる状況にはなっていません。繁殖研究を継続するにあたり、これまでの研究を総括されたことと思います。名古屋港水族館を含む4園館でこれまでに得られた成果は、シャチ5頭でなければ得られなかった成果と認識されていますか?
(5)生息環境の保全について
水族館における繁殖は、希少種であるシャチの生息域外保全となりますが、本来、種の保存は生息環境とともに保存する生息域内保全が重要であると考えます。名古屋港水族館は、シャチの生息数や地域個体群の調査(国内外問わず)などについて、積極的な連携を持っていないと認識しています。シャチの繁殖研究が重要であると認識していながら、野生下での調査・研究に積極的に関わらないのはなぜでしょうか?
(6)希少種の売買について
「ナミ」の売買金額は、5億円であると発表されています。シャチの売買では、過去に例のない金額です。希少動物の高額な売買は、利益目的の取引を助長させる危険が生じます。生物多様性条約第10回締約国会議の開催を控える都市が、希少動物であるシャチを5億円で売買したことは恥ずべき行為であり、まさに不見識であると判断せざるを得ませんが、どのようにお考えでしょうか?
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