名古屋港水族館で飼育されていた雌シャチ「ナミ」が、搬入からわずか7ヶ月で死亡したことは大変残念です。飼育関係者の方々が、全力を尽くして対応されたことに敬意を表しますが、今後究明される死亡原因が何であれ、搬入前から懸念されていたように、飼育環境の大きな変化が影響を及ぼしていたことが推測され、ナミを移送し、飼育する計画自体に無理があったのではないかと考えています。
これを機に、名古屋港水族館が進める「シャチ繁殖研究計画」とはいかなるものなのか公にし、新たな角度から改めて検証することが必要と考えます。
1.飼育した7ヶ月間の成果の公表
名古屋港水族館は雌シャチ「クー」を約5年間飼育した経験がありますが、太地町立くじらの博物館で20年余り飼育されたナミを、名古屋港水族館という新たな環境に移した後の7ヶ月という短い期間で、何を得られたのか。半ば公費と言えるお金を使い、前例のない高額でナミを購入し、飼育した成果の公表が必要と考えます。
2.繁殖研究計画の公開
クーを飼育していた時から、民間企業では考えられない巨額の費用を投じて続けられている繁殖研究は何を目的とし、いつまで続けるのか。クーを通じた繁殖研究の成果は、再三の要望にもかかわらず研究報告書が未だに公開されず、誰もが、いつでも知る事ができる状態になっていません。なぜシャチという特定の種の繁殖研究を続けなければいけないのか、その理由は明確にされていません。野生下のシャチは、1日に100kmを超える移動をすることがあり、家族単位で暮らし、音でコミュニケーションをはかる動物です。
水族館で繁殖を成功させたとしても、繁殖個体を野生に放せる可能性は限りなく低く、水族館で生まれた個体は、水族館で一生を終えることになり、「種の保存」に貢献することはできないと思います。公の施設である名古屋港水族館がシャチの繁殖研究を続ける理由は何であるのか、計画を公表し、検証する必要があると考えます。
3.ブリーディングローンの中止
鴨川シーワールドから2頭のシャチを借りる計画は、ナミの繁殖を目的としたブリーディングローンでした。ナミが死亡した現状においては、その目的が達せられる事はありません。前項で記した、シャチ繁殖研究の意義、繁殖研究計画の検証のため、中止する事が適切であると考えます。
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